この本を一言でくくると「孤独」というワードに思えた。
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ガシマン
なんという見出しだと思われるだろう。
世間で同世代の中では情弱寄りではないと自分では思っているが、この本は知らない単語が多く出てくる。読み飛ばすこともあるが、気になると一旦ググっている。
そこで「ガシマン」である。推測もあまりできない感じでググってみてなるほどと理解。実はそこから飛ばされるリンクに驚いたのだ。
今日のパパ活事情のやそのマニュアルがここまでかというぐらい手取り足取り指南してある。少し読んでみたが、ますます現代の孤独を実感させられた。
孤独の本質的価値は誰からも何も期待されないこと
誰からも何も期待されないことと言う文章が突き刺さる。
「誰からも何も期待されないことが苦痛に感じてしまう病」を持っている人達をみるにつれ人の多様性とはつくづく不思議なものだと思ってしまう。
「東京の本質が孤独であるようにタワーマンションの本質も孤独であるのかもしれない」という一節があったが、基本的に世界中がいやそもそも人間の存在自体がそんなものだろうと思ってしまった。
青山のアクアパッツァ
短編の一つにこの表題があった。二卵性双生児の姉妹の話だ。かわいくない真面目な姉と美人妹の十人十色的物語。どこか刹那的に堕ちていく自分自身の運命を重ね合わせる人も多いのではないだろうか。
読みながらルポ池袋アンダワールドという本を思い出した。心の中にモヤモヤとする得体の知れない気持ち悪さが残る。そしてそれが現実だということもよくわかる。本を置いた後に残る感触がどこか似ている。
Tinder
読み進めると何回かマッチングアプリTinderが登場する。気になって調べると利用者は、Z世代と呼ばれる18歳~25歳が約5割で、この傾向は日本だけでなくグローバルでも共通らしい。「既読スルーされた後に」というキャッチコピーが耳に残る。ここでもテーマはやはり「孤独」
お通しカット
昨今のお通しトラブルがあったことは理解してたが、「お通しカット」という言葉は初めて。15年ほど前に築地場内のすし屋で、行列がいるにもかかわらず少しししか注文しないで長居するのが問題とお店の人に聞いたことがあったのを思い出した。お通しが嫌なら行かなければいいだけである。論争にするのは自分の意見を押し付けたいから
高円寺の若者たち
この章は正直不快だった。これを読んで実行に移す人が出ないことを願うばかりである。これが僕の価値観ということだろうな。
ルッキズム
ルッキズム(lookism)とは、外見に基づく差別または偏見である。主に人間が、視覚により外見でその価値をつけることである。と、Wikipediaには書いてある。「ルッキズムがルッキズムと名付けられてすらいない透明な悪意だった時代」という表現があり、2回読まないと意味が伝わらなかった。しかし、いい表現だなと思う。
貴重な休みをブスに捧げた赤字を、みんな射精で取り返そうとしているだけだった。
恐ろしいほどの表現力。あの雪の日の真っ白な不幸せを、ふわふわの茶色い幸せで、少しでも上書きしてやれるように。という表現で終わりを迎えていくこの章はどこかすがすがしい。読んでいて妙に納得去られる。
希望
末期胃がんの 父親が娘に向けた遺書、オーソドックスな話。 本全体からするとこの作品は普通感が出ていて安心できる。むしろここだけかもしれない。
さらりと短時間で読める本。深い感性は僕にはないので面白い読み物ではあるがそれ以上でもそれ以下でもなかった。 知らないワードがたくさん出てきてそれは「あぁ今の常識ってこういう感じなのか」と言う疎外感を感じさせてくれて学ぶこともあった。
どことなくこの本の根底に流れているものは負け組の(少なくとも主人公はそう思っている)生き様の描写のように感じる。 自虐的な気分に浸りたいときにお勧めの本である。
#この部屋から東京タワーは永遠に見えない
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